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武装した警備員が立つゲートをくぐり抜け、サバンナを想わせる乾いた草地が穏やかな午後の青空の下に広がっている。
現在進行系で戦闘活動が行われているとは思えない、静けさの中を車は砂埃を巻き上げ進んで行く。
「周囲に、敵影はないようだ」
「あっちゃ、困る。命の代わりに、敵の大将首を上げたんだ。しばらくは大人しくなって貰わないと無駄死にでしかない」
「作戦は、上手くいったようだね。よかった」
車は舗装のされていない砂利道を進んでゆく。どうやら、丘を目指しているようだ。
「あのとき、死ぬまでの数分だけは二人きりだったかな」
「ロマンティックには、ほど遠かったけれどね」
救援信号を送った直後、敵の妨害に遭い通信障害に見舞われた。誰にも助けを求められなかった最悪の数分だったが、たしかに、誰の邪魔も入らない二人だけの数分だったかもしれない。
「面白くない冗談だよ、ミナイ。僕は、機械なりに君の死を悼んでいるんだ」
僕の記憶は、良くも悪くも鮮明だ。
感情と呼ばれる部分が追いついていないからこそ、平静でいられるだけだ。できることなら、綺麗さっぱり忘れてしまいたい。
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