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今は、返事がないので全て僕の独り言になってしまうわけだが、機械とはいえ癖が出る。僕の癖は、おしゃべりなところだろう。返事がなくともついつい喋ってしまう。
僕は、人型戦闘兵器のオペレーションシステム。つまりは、AIだ。機体番号から〝ナイン〟と通称で呼ばれている。
登録されているパイロットは、日本国籍を持つ男性で、二七歳、独身。
名前は、ミナイ・ユウヒ。すでに、息は途絶えてしまっている。
何を喋っても、独り言になるわけだ。死体は、喋れない。喋りたくとも、沈黙するしかない。
人間のように虚しいと思う感情がないのが、幸いだ。いつまでも喋っていられるおかげで、ぼくは稼働し続けられている。
コックピット内の環境を維持するために、僕は本国から救援が来るまで眠りにつけない。
外は、灼熱の砂地だった。いくら密閉度が高く、分厚い装甲に守られているとはいえ、快適な温度を保つには限界がある。
空調をとめれば、ミナイ・ユウヒの遺体はすぐに朽ちるだろう。生命活動の停止は、腐敗を招く。
最適な気温を保っていても、柔らかな体はすでに形を変えはじめている。
溶けるように朽ちる肉体は、まるで、僕の中にミナイが消化されていくようにも思えた。
『冗談は、本当にならないから面白いんだろうね』
機体を棺桶にする、なんて言っていたミナイを僕は叱りたい。
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