君は、明日の夢を

25/31

40人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
 素直に再会を喜べない状況がもどかしい。戦争なんて、いますぐ無くなってしまえば良いのに。 「喜んでくれとはいわないが、悲しまないで欲しい。俺自身が選んだ選択だ。人の生を捨てても、俺はお前と共にありたかった」  そっと伸びてきた手が僕からカップを取り上げ、肩を引き寄せた。  体を重ね合っても、生身でない僕たちに重なり合うような鼓動の音はない。体温も、人とは少し違う。  何もかもが違っているはずなのに、僕の中にあるものは安堵だった。  シートに乗せていたミナイの、懐かしい感触をすぐ側に感じていた。 「ずっと、言えずにいた言葉を君に伝えたい。俺が俺になれば、感情が邪魔をして、きっと言えなくなってしまうだろうから」  肩を掴む手の力が強くなる。 「愛している。友として、兄弟として、個として」  引き寄せられ、そっと抱きしめられた僕は何もできず、ただ、夜空に瞬く満点の星々を見上げた。 「死んだ瞬間のことを、夢という形で何度も見ている。いわゆる、フラッシュバックというやつだ。ミナイは死の恐怖よりも、想いを伝えられなかった後悔を、最期の最期まで抱えていた」 「僕は、ただのナビゲーションシステムだ。ツールなんだよ?」  行き場のない両手を、ミナイの背中に回す。     
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加