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素直に再会を喜べない状況がもどかしい。戦争なんて、いますぐ無くなってしまえば良いのに。
「喜んでくれとはいわないが、悲しまないで欲しい。俺自身が選んだ選択だ。人の生を捨てても、俺はお前と共にありたかった」
そっと伸びてきた手が僕からカップを取り上げ、肩を引き寄せた。
体を重ね合っても、生身でない僕たちに重なり合うような鼓動の音はない。体温も、人とは少し違う。
何もかもが違っているはずなのに、僕の中にあるものは安堵だった。
シートに乗せていたミナイの、懐かしい感触をすぐ側に感じていた。
「ずっと、言えずにいた言葉を君に伝えたい。俺が俺になれば、感情が邪魔をして、きっと言えなくなってしまうだろうから」
肩を掴む手の力が強くなる。
「愛している。友として、兄弟として、個として」
引き寄せられ、そっと抱きしめられた僕は何もできず、ただ、夜空に瞬く満点の星々を見上げた。
「死んだ瞬間のことを、夢という形で何度も見ている。いわゆる、フラッシュバックというやつだ。ミナイは死の恐怖よりも、想いを伝えられなかった後悔を、最期の最期まで抱えていた」
「僕は、ただのナビゲーションシステムだ。ツールなんだよ?」
行き場のない両手を、ミナイの背中に回す。
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