40人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただのナビゲーションシステムに、ミナイはずっと恋をしていたんだ」
「ほんとうに、君は馬鹿だなぁ。死んだ後も悔やむくらいなら、理性なんて捨てて、僕を抱いてしまえば良かったのに」
ぎゅっと、僕は両手でミナイを抱きしめた。
「ミナイ、君は愚かだ。戦争の道具でしなかない僕をどうして人のように扱うんだい?」
「お前だけが、ずっと寄り添ってくれていた。期待も落胆もせず、俺をずっと見てくれていた。人であるか、機械であるか、俺にとっては些細な問題に過ぎなかった」
ミナイは僕をさらに強く抱きしめて、唇を重ねてきた。
入り込んでくる舌を、僕は拒むことなく受け入れる。仮想体としての、人に当てはめれば本能的な行動ではあるが、僕の意思でもある。
不安そうに体を強ばらせるミナイの背中を安心させるため、優しく撫でつけて、深く舌を絡めた。
僕たちの、最初で最後のキスになるだろう。
「たしかに、ミナイの性格を思うと基地ではできないね」
僕の中で、ミナイの要求に応えるためのスイッチが入る。
「ナイン、嫌なら拒んでくれてかまわない。これは、ミナイの生前の妄執に過ぎないんだ。共にいれるだけで、俺は……」
最初のコメントを投稿しよう!