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伴侶はともかく、ミナイは精子提供も拒んでいるし自身の複製制度にも反対している自然派だ。
コックピットから遺体を引きずり出されたら、僕はもう、ミナイと会えない。
『寂しいと、感じたい。僕は君が好きだった』
僕は、搭載されている様々なセンサーでミナイを見ていた。鼓動、思考、言動。彼の全てを、記録している。
死したミナイを見続けるのは、機械でも結構辛いものがあったが、任務が終わらない限り、僕は記録しなければならない義務がある。
いずれ、消去されるとしても。
悲しい、性だ。しかたないと、割り切るより他にない。
最期の最期まで、記録し続けることが、僕がミナイに向けられる唯一の情なのかもしれない。
僕は、朽ちゆく体の崩壊を止められない。まさか、コクピットを丸ごと冷凍させるなんて不可能だ。
食い止めるだけで、精一杯だった。
人のように抱きしめる手はなく、悲しむ心はなく、狂う感情も持っていない僕にとって、無駄だと思える手立てを行使することこそが、抱いているはずの悲しみを表現する手段なのかもしれない。
肉体に、どれほどの意味があるか僕にはまだ理解できない。
死という形が己の内部に確かにあるはずなのに、僕は死を感じられない疑似人格だ。
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