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「いつまで寝ているんだい、ナイン」
遠慮のないノック。
いや、パンチだろうか。
がんがんと、コクピットハッチが揺さぶられている。
かまわず、僕は沈黙を貫き通す。人間なら、シーツを被って寝返りをうつような感覚だ。
眠っていたい、何もかもを忘れて、ただひたすらに眠っていたかった。僕を起こしたいのなら、全てを消せばいいんだ。
ミナイと過ごした僕をまるっと全部消去して、新しいパイロットのために調整し直せば良いものの、整備スタッフは僕に蓄積されたデータが消えてしまうのに難色を示した。
まあ、わからなくはない。
常に前線に立って戦っていたミナイと僕が残したデータは膨大で、その全てを失うのは、新しいパイロットを据え付けるよりもリスキーだろう。
「起きるんだ、ナイン。居眠りしていたって、何も変わらないだろう」
ああ、嫌だ。
僕を殴りつける声は、ミナイそのものだ。
とはいえ、彼の肉声であるはずがない。ミナイは死んだ。僕の中で、息を引き取っている。
僕を穏便に起動したいスタッフの、たちの悪い悪戯だろう。
同意があれば、複製体を作れるような社会だ。声を正確に模倣するなんて、朝飯前なはずだ。
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