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なつかしい、今よりも少し幼い面影は子供っぽくて愛らしかったように思える。
当時、生まれたばかりの僕にとって、ミナイは父であり、兄であり、もっとも親しい友人だった。何度も、何度も、生死を共にした。
そして、今から一ヶ月前。
ミナイ・ユウヒは作戦行動中に死亡した。
天才パイロットの早世は、多くの人々を悲しませた。
『君の死を悼んで、勝手に複製体が制作されたのではないか?』
物資と人材は、つねに引き手数多だ。
とくに、最前線に立つパイロットは、政府に提供した遺伝子情報を元に死後、複製体が制作され二回目の従属をするよう望まれている。
『ミナイはナチュラリストであるが、それ以上に怠け者だ。死んだ後も政府に酷使されるなんてまっぴらだと言っていたよ』
「君が疑うのも、無理はない。生前の俺は、とても頑固者だったらしいじゃないか。二度目になれば、報奨金も名誉もたくさん与えるからって飴にもまったく興味を示さなかったのにって、上官殿に愚痴られたよ。遺伝子提供に同意するよう説得するために悩みすぎて髪が抜けたってね」
他人事のように、ミナイは笑う。
「葬儀の際、遺書が部屋から見つかったんだ。遺伝子データと、秘密裏に複製されていた脳組織と一緒にね」
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