知らない顔・欲しい顔

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 箱が止まって扉が開いて、秋生さんに先導されて部屋に入ると、そこは外観からは想像もできないくらい刺激的だった。ガラス張りのシャワールームとダブルのベッドは普通だけれど、壁に十字架の磔台が設置されている。奥のチェストにはムチや首輪、バイブなどが並んでいた。 「そういう趣向の人が訪れる店だから、男同士でも抵抗なく入れるんだ」  服を脱ぎながら秋生さんが教えてくれた。利用したことのある言い方に、どう答えれば正解なのか。  そういう趣味があるんですか?  前に誰かと来たことがあるんですね。  その相手は藤岡さんですか。  どれもこれも余裕のなさを表していて情けなくなる。秋生さんはさっさとシャワールームに入ってしまった。いつもはキスを楽しんでから、僕をなだめて入るのに。昨日、おあずけを食らった僕が止まらないかもしれないと考えたのか、秋生さんも僕を欲しがってくれているのか。  後者だと確信を持てない口惜しさが、チェストの中の道具に手を伸ばさせる。独占欲が視線を首輪に固定した。衝動的に首輪を購入してから、ほかのものも物色する。  これのほかに、そそられるものはなかった。秋生さんを僕のものだと示す道具のほかは、どれも低俗で悪趣味な道具にしか感じられなかった。  棚の下段に視線を移してアナルプラグを見つける。これを栓にすれば、会社で僕を注いでも服を汚さずに済むと考えて購入した。いくら薄くてもゴム越しに秋生さんを感じるなんて嫌だから。  ボディバッグにアナルプラグを押し込んで、服を脱ぐ。全裸になる前にシャワーの音が止まった。出てきた秋生さんに腕を伸ばして首輪をつけながらキスをする。秋生さんの腕が僕の腰にまわり、キスが返された。 「これは、どういった趣向かな?」
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