rebirth

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 山名の背中を覆う彫りものに目を奪われた。それの存在に気づいたのは今ではないが、こうして全体を見るのは初めてだった。黙り込んだアオイを心配したのか、山名が覗きこむ。怖いかと尋ねられ首を振った。  怪我の治療中、名前を答えられなかったアオイに、事情は人それぞれかとあっさり言い放った山名を思い出した。彫り物を背負う山名にも事情があるのだろう。 「綺麗です」  思わずため息が漏れた。そうか? と、山名が見せてくれるのか背中を向けて座った。腰のあたりから雲を突き抜ける龍が天へと昇っている。盛り上がった左の肩甲骨から肩には艶やかな牡丹が咲き誇り、大きく口を開けた龍はまるでその花を食らおうとしているかのようだ。 「ざらざらするわけじゃないんですね」  アオイは思わずその背に触れた。なんとなく膨らんでいるような気もしないでもなかったが、それは筋肉の隆起と判別がつかない。 「皮の下だからなぁ」  山名がくすぐったそうに肩をすくめた。 「花が気になるか?」  ずっと肩を触っているアオイに、普通は龍のほうが人気だと不思議そうにしている。 「龍に食べられそうに見える」 「花は散り際がいちばん美しい……彫ったじじぃがいってたな」 「散る……圧倒的な力で喰われるのも気持ちよさそう」  山名が目を見張った。 「おもしろいことを考えるな」     
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