月猫書堂

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「……本当に願うもの?」  佳世は手渡された本をジッと見つめる。 「うな。願った人にしか見つけられない本屋なん」  ――伊藤くん。 (ずっと好きだった……中学一年の時に同じクラスになったときから) 「でも……私、今は受験生だもん。好きとか告白して付き合いとか、言ってられないの。……伊藤くんと同じ高校へ行けるように頑張らないと……」 「恋心を抑えながら受験勉強に励むも、募る一方なんね~」 「ぐっ……」  どうしてそこまで分かるの? (化け猫だから?)  ジッと猫店主を見つめる。  目を細めて、おかしいのかどうか見計られないにんまりと端があがったいる口。  茶虎の毛皮に直接羽織っているエプロン。  後ろ足で、がに股気味に立っている姿。 (どっしり過ぎて、どっかのおっさんみたい)  おっさんに恋心を指摘されて、しかも猫に。 「じゃあ、これなんかどうにゃ?」  猫店主が奥へ引っ込んで「とっておき!」と言わんばかりに佳世に渡す。 「伊藤翔太と仲良くなる100の方法」  佳世は本と猫店主を交互に見る。  猫店主は、「どうだ? どうだ?」と前足を擦り合わせ、ゆらゆらと長い尻尾を揺らしていた。  なんだかおかしくなってきて「くすり」と笑う。 「仲良くなる方法なら……参考になりそう」  そう言ったら猫店主の尻尾がピン!とまっすぐに立ち上がった。 「まいどありー!」
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