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しばらくして――奥からのそっと、大きな猫が出てきた。
先程、レジを占領していた茶虎猫だ。
「もう、行ったかにゃ?」
「ああ、でも今日は突然お客さんが入ってくるかもしれないから昼間は、普通の猫のままでいてくれよ」
諭すように青年に言われた猫は「分かってるにゃ」と言いながらもレジ台に飛び乗ると後ろ足を投げ出して、まるで人間のように腰掛けた。
「分かってない」と、ぽそっと青年は溜め息混じりに呟く。
「あの子の願い叶ってたんね。あんたがやってきたから、誰かの本が、消えたのは分かったけどにぇ」
「そうだね。でも、またここの場所突き止めるなんて驚いたよ」
「たまにはあるさー、こういうこと。春の陽気で時空も眠くてさぼり気味なんじゃないにょ?」
「上に報告しとかないと……」
生真面目に答える青年に猫は
「別に大事になってないの。あんたは真面目すぎて面白くないにゃ」
とにゃは、と笑う。
「大事にならなかったのは、僕がいて店員のふりをしていたからだろう?」
声を荒げた青年に猫は「まあまあ」と前足をひらひらさせる。
「今夜が楽しみにゃ。なかなか分厚い本だったからにゃ、佳世ちゃんのは」
と目を三日月型にして猫はにんまりした。
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