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この画廊に飾られております肖像画は、先程申し上げました通り、“とある御仁が今までに出会った方々”を描いたものです。
中には、既に“過去”となっている方も存在致します。
つまり、縁を切っている、という事です。
諍(いさか)いの末、若しくは、自然と。
“とある御仁”の心や生活の内外で、“過去となった”または、“過去になった”…そんな肖像画が、数点ございます。
完全に“過去”となっている肖像画には、額縁に錠が取り付けられています。
えぇ、南京錠です。
滑稽(こっけい)でございましょう?
続きがない、描き足す予定がない。
ですから、錠をして、閉じ込めてしまったのです。
あぁ…気付かれましたか?
そうです。
この画廊の肖像画は、錠が取り付けられているもの以外は、
まだ、描き途中です。
縁を切りたくても、様々な事情があって切れない。
自身の世界から淘汰(とうた)したくても、出来ない。
そんな肖像画の方が、多いのです。
世の中、そんな事ばかりでしょう?
自身に都合の良い人間以外を淘汰出来るなんて、そんな“幸せ”、手にしている人間なんて一人もいない。
これは、断言致します。
ふふ…。
脱線してしまいました。
この画廊に飾られている肖像画は、大きく分けて、
“過去”と“現在”
である、という事です。
そして、“現在”とは、更新がつきもの。
あぁ。
肖像画が更新された時は、回廊の外にて、ご案内致します。
例えば、
“Xの肖像”が更新されました!
のように。
ふふ…。
滑稽ですね、とても。
さて、肖像画が並ぶ回廊への入り口が、こちらです。
えぇ、この、赤い赤い、カーテンの向こうです。
では、ここを開ける前に、あなた様に、最後の補足と、問いかけを…。
そして、私の切なる祈りを。
大丈夫、簡単な問いです。
答えも、私は求めておりません。
ただ、戯言として、心に留めて頂ければ、幸いです。
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