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甲高い女性兵士の声が、炸裂する連射音の合間から聞こえてくる。
《雄輝、薬音寺、あんたら、ノロすぎ! いま、十八匹目を吹っ飛ばしたわよ》
パワフルな機関銃手マリアによる制圧射撃に正面は任せ、側面からの敵に集中する。
向かってくる敵に照準を定め、撃つ。
そろそろ装填弾薬が尽きる、と脳が告げている。
弾倉内の残り弾薬数を、身体がリズムで覚えている。
「装填!」
さけぶ。
薬音寺の援護射撃。
敵の攻撃を避けつつ、空になった弾倉を落とし、予備弾倉を叩きこむ。
装弾。
その間、わずか一秒足らず。
習慣化された動き、訓練のたまものだ。
《今日は早く帰れそうだなぁ。お前ぇら、敵は既に壊滅状態だ。圧倒的に撃滅しな》
無線から分隊長の声がする。
「了解」
全員が唱える。
自然な連携で敵を追い詰める。
たがいのすがたなど、もはや、目視していない。
ただ、認識している。
誰がどこで働いているか、皆、理解している。
身を隠す障害物も、周囲を見わたす高台も存在しない、どこまでも広がる荒野。
淡々と、ライフルを撃ちつづける。タタタン、と三点バーストがリズムを刻む。
突然、真下の地面が膨れ上がった。
地を蹴って後退し、裂けていく大地に銃口を向ける。
咆哮〈スペル〉。大地の奥から。
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