1-1 灼熱の黙示録〈スコーチング・アポカリプス〉

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 それに、どこでおぼえたのか、奇妙なしゃべりかたをする。 「お前さんの破壊力は誰にも止められないだな」  ノイズ二曹の言葉には応えず、周囲を見わたす。  敵のすがたはない。 「殲滅完了、オールクリアすね」  ノイズにつづき、となりまで歩いてきた同い年の小銃手──紫苑が口にする。  整った顔立ちに、戦闘時はスーツの内側に隠してある、肩まで伸びた髪。  女の子特有の円らな瞳に、小さめの唇。  基本的に無表情・無感動を、彼女は保持している。 「まあアレだ、俺の特技は射撃じゃねぇ、治療だっての」  薬音寺がマスクを半分脱ぎ、言いわけしながら帰ってきた。短機関銃を肩に当て、宙に向けている。黙っていればハンサムな横顔で、マスクの内側には、戦場を舐めているとしか思えない黒のサングラスと、バックに流したロングショート・ダックテール。 「どれだけ殺すかじゃなくて、どれだけ救うか。お、いまの名言?」  スパン、といい音がして、薬音寺がつんのめった。マリアに後頭部をはたかれたのだ。  母親がフランス人のハーフである彼女の髪は、戦場に似つかわしくない、赤毛のポニーテールだ。  薬音寺より一つ下の十五歳で、さきほどから噛みつづけているピンク色の風船ガムを紅い唇のあいだから膨らませる。  弾ける。     
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