1-1 灼熱の黙示録〈スコーチング・アポカリプス〉

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 十七歳の樽本陸曹長は、粉砕分隊の分隊長だ。  坊主頭の猛犬と呼ばれる、ガラの悪い人相。  額から右頬に傷痕が走り、片目を潰している。  彼は、一年後に現役引退が迫っていた。 「美奈ぁ、お前ぇも、よくやったなぁ」  真幸と同じくらいの背丈の少女、美奈。  金色に染めた髪の、短く小さいツインテールの少女は、手榴弾を大量に所持した、小さな擲弾手だ。 「死んじゃえ腐っちまえ腫れちまえぶいぶいぶい」  下を向いたまま、なにやら呪詛のようなものを、ブツブツつぶやいている。 「あいかわらずウツな感じですな、妹さん」  薬音寺が樽本の肩をたたき、銃をかついで伸びをした。 「あたし、カレーコロッケに一票」  マリアが手を上げると、薬音寺が怒鳴る。 「馬鹿、クリームコロッケだろ」 「ばかばかばーか、撃破数最低のあんたに、決める権限なんてあるわけないでしょ」  コロッケの中身が決まらないまま、回収のヘリコプターがやって来る。  ヘリに乗りこみつつ、あちこちで燃えくすぶっているクラッグたちの残骸を見つめる。  クラッグ。  突然の襲撃者。人類の脅威。敵。  地中から現れては人類を襲う魔物。怪物。     
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