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17. 鼓動の記憶
驚いた様子で私を見る片岡さんや実穂さんのご両親に、ぽつりぽつりと今までのことを話し出した。
幼い頃から心臓を患っていたこと、そして――5年前、心臓移植を受けたこと。片岡さんを見ると、実穂さんのご両親やこの家を見ると……胸が締め付けられるように、苦しくなることを。
「確証なんてないんです。でも――もしかしたら、あの日私に心臓をくれたのは……」
「翼さん、と言ったわよね」
「は、はい」
話し終えた私に、実穂さんのお母さんが口を開く。
「少しだけ、待っていてくれるかしら……」
そう言うと……実穂さんのお母さんは部屋を出た。
――どれぐらいの時間が経っただろうか。一枚の封筒を持って、実穂さんのお母さんは戻ってきた。
「これに、見覚えはある……?」
「これ……」
便箋には幼い字で、移植に対するお礼と……これから元気になることに対する希望が書かれていた。
それは――紛れもなく、12歳の私が書いた、あの手紙だった。
「あ……あああ……」
ぽた……ぽた、と涙が溢れる。繋がった。あの日の私と――今の私、それぞれが今、繋がった……。
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