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01. 新たな命の始まり
あの頃の私は、母に言わせるとまるで生き急いでいたようだったそうだ。
大人になれないことを分かっているかのように、体だけが大人に近づいていっていた。
「はあ、退屈。今度はいつ学校に行けるのかな」
幾度も繰り返される入院生活。学校に行くよりもはるかに、多い病院で過ごす日々。
「早く退院出来ると良いなぁー」
「そうだね。じゃないとみんなに忘れられちゃうよ」
「う……」
ベッドの横で漫画を読みながら、昴(すばる)が意地悪なことを言う。
「こーら、そんなこと言わないの。大丈夫だよ、きっとみんな翼(つばさ)の事待ってるよ」
「徹(とおる)ちゃん……」
そんな昴をたしなめてくれるのはいつだって優しい顔で私たちを見守ってくれる徹ちゃんだった。
「兄ちゃんは翼に甘いからなー」
「昴ほどじゃないけどね」
「別に俺は……!」
生まれた時からずっと一緒にいる昴と徹ちゃん。
私と同じ12歳の昴は同じ月の同じ日に生まれて以来、まるで兄妹のように育ってきた。たまにいじわるを言うけれど、でも本当は優しいのを私は知っている。
そんな私たちより11歳も年上の徹ちゃんは、いつだって私たちを守ってくれた。強くて、かっこよくって大好きなお兄ちゃん。
心臓が弱くてみんなと同じように学校に通えない私を、二人がずっと支えてくれてきた。今だって仕事で両親が傍にいられない時にはこうやって、時間を見つけては病院まで会いに来てくれている。
大好きで、まるで家族みたいに大切な二人だった。
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