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「ねえ、徹ちゃん」
「うん?」
ジュースを買いに行ってくる、と昴が部屋を出て行ったあと……私は徹ちゃんに尋ねた。
「徹ちゃんは……知ってるんだよね。今回の入院が、最後になるだろうって言われてること……」
「――それは……っ」
「良いの、聞いちゃったんだ。ママとパパが話してるの。私が寝てると思って……二人が……」
「…………」
「私――もうすぐ死んじゃうん、だよね……」
「そんなことない!医者なんて最悪を想定して一番悪いことを言うから……!」
「……徹ちゃん」
くそっと吐き捨てるように言うと、徹ちゃんは私に背中を向けた。
(ごめんね、徹ちゃん)
パパもママも私にはなんにも言ってくれない。
ただ大丈夫だから、と微笑んで……いつだって影で泣いてるのを私は知っていた……。
「ドナーさえ見つかれば……」
吐き捨てるように、徹ちゃんは言った。
「ドナー?」
「そう、そうしたら翼は元気になれるんだ」
そう言いながら徹ちゃんの表情が曇った訳を、この時の私は分からずにいた。
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