17. 鼓動の記憶

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片岡さんは行きと同じように、無言のまま帰り道を車で走る。そして――見覚えのある場所で止まった。 「ここ……」 私たちがいつも過ごす、あの河川敷だった。 「少し、いいかな」 「はい……」 車を止めると、私たちはどちらからともなく手を繋ぎ河川敷を歩き出す。 そんな私たちを夕日が包み込む。 「ちょうどこれぐらいの時間だったんだ」 「…………」 「事故にあって、倒れた実穂を真っ赤な夕日が照らしていた。血がどんどん溢れる実穂の身体を……」 「片岡さん……」 でも……と、彼は続ける。 「彼女は君の中で、ちゃんと生き続けていたんだね」 「はい……」 「こんな気持ちで、夕日を見ることが出来る日が来るなんて思ってもみなかった。……翼ちゃん、君のおかげだよ」 そう言うと……彼は私の身体をギュッと、力強く抱きしめた。 「僕はもう一度……人を、好きになってもいいんだろうか」 ポツリと呟いた彼の言葉は、不安そうに震えていた。だから、私は――彼の身体をそっと抱きしめ返す。
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