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一弥は「ひぃッ」と声を高くし、反り返った雄蘂から蜜を迸らせた。まごうことなき愉悦にむせぶその表情を目にすると、己のものもまた隆々とそそり勃ってくる。
もっとだ。もっと快くしてやりたい。自制も慎みも何もかも忘れさせて、悦楽の坩堝へと没入させてやりたい――
「ああっ……あうぅっ……、や、あぁあっ……!」
一弥に獣のかたちを取らせて双臀をわし掴み、荒々しく律動を送り込んでやる。身の裡で、白い焔が燃え盛るかのようだ。腰骨をがつがつと打ち付ければ、媚肉は淫靡にうねり、男をさらなる愉悦の境地へと誘い込む。
どれだけ達しても、どれだけ極めても飽くことはなかった。剛実は細い身体をかき抱き、唇を吸い、繰り返し奥処を貫き、全身で積年の情を果てることなく注ぎ込んだ。
ようやく正気を取り戻した時は、すでに白々と夜が明けていた。座敷に差し込んでくる朝の光を見、剛実は、ひと晩中の乱暴狼藉を働いた腕をやっと放す。
「……、」
細い身体が褥に頽れた。花ごとぽとりと落ちた、椿のような姿だった。
腕の縛めを解く時も、一弥は微動だにしなかった。髪を乱し、目を虚ろにし、乾いた唇を呆けたように薄く開けたまま、されるがままに敷布に身を預けていた。
何を言えるわけもなく、剛実はただ羽織だけを背に掛けてやり、黙してその場をあとにした。鉛のように重くなった心を引きずって。
後悔だけはしまい、するまいと思ったのに、後味の苦さは痺れるほど骨身に沁みた。だが、それよりももっと激烈な痛みを感じているのは……。
自分がずたずたに切り裂いた主の心を思い、剛実はうなだれた。ただ、ひたすら無念だった。自分は何て身勝手で、愚かな人間なのだろう。望みは叶ったというのに、一番欲しかったものを粉々に砕いてしまった気がした。
ぎり、と皮膚が裂けるほど拳を握る。こんなかたちでしか想いを交わせなかった不甲斐なさにむせび、剛実は胸に声なき慟哭をこだまさせた。
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