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「……一弥さま」
一弥は爪先立ちになり、相手の首に腕を回す。剛実の腕も、震えながらほぼ同時に一弥の背をかき抱いてきた。
唇に唇を重ねると、剛実もすぐに深々と口づけてくる。伝わる熱に、身体の芯が瞬時に蕩けた。蜜のように甘い接吻を受け、一弥は陶然としてそれを味わう。
「剛実、お前だけが、愛しい……この唇を、この肌を許したいと思う相手も、生涯お前一人だけだ」
二人、もつれ合いながら寝台に倒れ込む。言葉はすべて、互いを求め合う深い口づけに替えられた。共に服を取り去り、一糸纏わぬ裸身でひたと抱き合う。
「剛実。……」
やっと抱きしめることの出来た相手の名前を呼び、広い背を両腕でかき抱く。ずっと、ずっとこうしたかった。惨たらしい傷痕を慈しむようにそっと手を当て、彼が今、ここに生きている尊さを噛みしめる。
「一弥さま……」
剛実もまたひしと裸身を抱きしめ、感に満ちた声で名を呼んでくる。手のひらがこの上なく優しく素肌を這い、唇もそちこちを甘くついばむ。皮膚はそれだけでさざ波立った。愛しい男に抱かれているというだけで、感覚がたちまち鋭敏になっていく。
「ぁ、……」
胸の粒に口づけられ、一弥は吐息をこぼした。愉悦の焔がたちまち灯り、枯れ野に放たれた野火のように総身に広がっていく。
「あ、あぁ……」
熱い舌が粒をねぶってくる。細かな舌の動きに早くも腰骨が痺れ、一弥は背を弓なりに反らせた。剛実はそこに腕を滑り込ませ、乳白の裸身をしかと抱き込みながら丹念に愛撫を加えていく。無骨な手指の先から相手の想いが伝わって来、一弥は恍惚としてそれを享受した。
「ぁ、あ……」
触れられているだけでも心地良い。声が自然とこぼれ出し、気持ちが否応なしに昂っていく。あの時のように無理に堪えていなくてもいいのだ。一弥は、いつも己に課している慎みを今だけは忘れ、自らも剛実を求めた。細腕を巻きつけ、肌をひたりと相手に添わせる。
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