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 火照って仕方のない身体をよじり、一弥は求めて止まない相手を見つめる。瞳が濡れ濡れと、潤み蕩けているのが分かった。早く、早くひとつに抱き合いたい。気持ちが急き、細腰が淫猥に揺らめいてしまう。  剛実が額の汗を拭って顔を上げ、指をぬるりと引き抜く。そして開いた一弥の脚の中心に割り入り、己の屹立を沈める。  何も抑えず、何にも囚われることのない感情のまま、二人、深く繋がる。 「あー……ッ……!」  一弥は全身で相手に抱きつき、思うさま悦楽に浸る。花びら舞う、春の嵐に揉まれているかのようだった。長大なものに貫かれてきつく、苦しくもあるのに、それよりももっと大きい歓びが、身の裡を激しく突き抜けていく。 「剛実……好きだ……お前だけだ……」 「一弥……一弥さま……」  感を極めるあまり眦に滲んだものを、剛実は優しく舐め取ってくれた。一弥も頬に口づけを返し、隙間なく抱き合って快感を共有する。 「あ、ぁ、あぁ……っ……」  情熱のままの律動を受け、一弥は喘ぐ。相手の背中に爪を立て、両脚を腰に絡めて巻き締める。たとえ皮膚の一辺でも、離れたくなかった。剛実も一弥の身をがっしと抱きしめ、反らせた喉にも首筋にも、狂おしく唇を押し当ててくる。  惜しみなく与えられる愛撫。息詰まるほどの口づけ。絶え間なく込み上げてくる愉悦に、全身がかたちもなく蕩け尽くしてしまいそうだ。 「あ、ぁ――ッ……!」  甘苦しい快感が爆ぜ、眼裏で白い閃光が弾ける。共に高みまで駆け上がり、腕と腕、脚と脚とを絡め合ってひとつに溶け合う。溺れるほどの愉悦が身体に込み上げ、歓喜の声となってこぼれ溢れていく。  悦びの波が引いても、二人、離れようとはしなかった。汗すら混ざり合った肉体を共有し、ひたと抱き合って陶酔のひとときを交わす。
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