351人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、いい気持ちだ。剛実、もっと」
「……はい」
細いうなじから肩にかけて、剛実は水を注ぎかける。何て色白く、つややかな背中なのだろう。背骨が描く艶美な線といったら、思わず目でたどり降りてしまうほどだ。濡れた黒髪がきめ細やかなうなじに張りついているさまを見れば、桶を持つ手が痺れたように震えてしまう。ずきずきと痛む股間の脈動が、耳にまで聞こえてくるくらいだ。
水を含んだ後れ毛を耳に掛けながら、一弥は心底、といった声音でつぶやいた。
「剛実は本当に働き者だな。そんなお前がそばにいると思うと、僕ももっと精進せねばと、身が引き締まる思いがする」
言い終えるなり、ざばっ、と音立てて一弥が腰を上げた。もちろん前は隠していたが、水に濡れた手拭いが、水蜜桃のような臀にぴったりと張りついてその丸みを主張しているのを、剛実は眼前に見てしまった。
一弥が、草の上の下駄を揃えようと屈む。手拭いがずれ、丸い臀の下部分が際どくこぼれた。その奥の菫色の翳りから、剛実は慌てて目をそらす。
そんな下僕をよそに一弥は、身体を拭いて浴衣を羽織り、手早く下帯をつけていく。
「すっきりした。ありがとう、剛実」
「……はい」
もはやそれだけしか返せず、剛実は、脚の間に血が降りたせいでくらくらする頭をどうにか下げてみせた。
その夜、下男部屋の布団からこっそり抜け出して厠の個室に入り、剛実は内鍵を厳重に掛けた扉にもたれる。
下帯を緩めると、すでに隆々とそそり勃っている逸物がまろび出てきた。昼間に目撃した裸身を思い描きながら幹に手を添え、熱く張り詰めたそれを上下にしごく。
「は、っ……は、……」
実は、このようなことをするのは初めてではなかった。すでに何度、こうして彼を想って情欲を吐き出してきたことだろう。同性の主君を汚しているのだ。これほど罪深く、おぞましい行為もあるまい。自分でもそう思うのに、しかし、つむった眼裏で展開される淫靡な絵巻は、恐ろしいほど蠱惑的に剛実を惑わしてくる。
最初のコメントを投稿しよう!