鈴木さん

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布団の中には何も無かった。 まだ着信を告げる音は鳴っている。 なんなんだよ。よく耳をすませば、下のほうから聞こえる。 下の住人の携帯の音まで聞こえるだろうか?俺、おかしくなったのかな。 ベッドの上から音のする床の方を見た。 突然、ベッドの下から、手が出てきた。 「うわぁあ!」 俺は驚いて逃げようとしたが、その手に掴まれてしまった。 「あやちゃん、どうして電話の電源、切っちゃったの?」 えっ?ナニこれ。俺じゃん。 「俺だよ、鈴木だよ。」 そいつはニヤリと微笑んで、俺を力いっぱいベッドの下に引っ張りこんだのだ。 テーブルの上のスマホが振動している。 落としたはずの電源が入っている。 そして、削除したはずのアプリが起動する。 「もしもしぃ?」 その男は、スマホを手にして、その女の声を聞く。 「はい、鈴木です。」
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