回想

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文化祭。 当時の俺にとってはめんどくさい行事でしかなかった。 特に当日が近くなると担任の授業が文化祭の準備に変わることもある。 授業をしろ、授業を。 そんな俺を変えた出会いがあったのが、高二の文化祭だった。 俺のクラスの出し物は 段ボール迷路だった。 アホらしい。 そうは思ってもシフトがある。 その時間は適当に客を教室の中へ誘った。 シフトが終われば、他のやつなら他のクラスの出し物を見に行くんだろうが、 そんなだるいことするもんか。 それから、校舎の一番奥の教室へ向かった。 「ちっ」 いつも一人になるときに来る教室なのだが、 ここも例外なく文化祭の枠に入っていた。 入り口には 「美術部展示会」 と書いてあった。 別に美術には興味ない。 しかし、特に行くあてもないので、 ひとまず入ってみる。 幸い、中にいる女子生徒は物静かで話しかけてこない。 展示されている作品をさらっと観た。 何点かうまいなと思う作品はあったけど、 正直ぱっとしない作品が多かった。 俺の感性が貧しいのか? まあ、そんなのはどうでもよい。 とっとと帰るかと思った瞬間、 何故か惹かれる作品があった。 別段うまいというわけでもない。 どこがいいのかと聞かれたら、 何も答えられないであろう。 「いい作品に巡り会えましたか?」 しばらくその作品を眺めていると、 突然声をかけられた。 声の主は、さっきからこの部屋にいる物静かな女子生徒であった。 「いや、何となく惹かれてしまって。 特に理由はないんだが」 「それは、あなたに向けて描いた作品だからです……」 後にわかったのだが、 この女子生徒は一年生の頃同じクラスで、 俺に一目惚れしていたらしい。 それが今では、夫婦揃ってイラスト関係の仕事に携わっている。
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