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背も体型も一般的に見て平均的、こちらの生命線である電気ランプと、探知機を手にして索敵している少女――南梢(みなみ・こずえ)。
定期的な電子音が、近くにまだ敵がいることを示している。
南が、探知機の筒のような先端を、来た道とは反対の扉に向ける。
電子音が強まる。
どこかの誰かの比較的裕福な家――その居間を横切り、台所に足を踏み入れる。
電気ランプの光に怯えた声が、天井から響き、僕たちは一斉に上を見た。
天井に張り付く屍の姿。
飛びかかろうと身構えていた屍を、電気ランプの強力な光が足止めする。
来栖泰羅(くるす・たいら)が、銀製の槍を、屍、目がけて突き上げた。
我らが班長――そして僕の同級生である男は、正確に屍の胸を刺した。
他の仲間と同じく、服装は、一般特殊部隊の突入用装備と同等。
普通の装備と異なるのは、ところどころに鉄のメッシュ素材が用いられていることだ。
現代風の鎖帷子。
防弾バイザー付きのヘルメットが、血飛沫から来栖の顔を守った。
「一」
探知機を確認しながら、南が告げる。
この縄張りには、突然変異体の屍が一体いるという話だった。
突然変異体は、銀に対して免疫があり、銃や槍がほとんど効かない。
簡単に殺す方法は、一つしかなかった。
南の背後で、唸り声が上がった。
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