1-1 血は紅く

2/8

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/210ページ
 背も体型も一般的に見て平均的、こちらの生命線である電気ランプと、探知機を手にして索敵している少女――南梢(みなみ・こずえ)。  定期的な電子音が、近くにまだ敵がいることを示している。  南が、探知機の筒のような先端を、来た道とは反対の扉に向ける。  電子音が強まる。  どこかの誰かの比較的裕福な家――その居間を横切り、台所に足を踏み入れる。  電気ランプの光に怯えた声が、天井から響き、僕たちは一斉に上を見た。  天井に張り付く屍の姿。  飛びかかろうと身構えていた屍を、電気ランプの強力な光が足止めする。  来栖泰羅(くるす・たいら)が、銀製の槍を、屍、目がけて突き上げた。  我らが班長――そして僕の同級生である男は、正確に屍の胸を刺した。  他の仲間と同じく、服装は、一般特殊部隊の突入用装備と同等。  普通の装備と異なるのは、ところどころに鉄のメッシュ素材が用いられていることだ。  現代風の鎖帷子。  防弾バイザー付きのヘルメットが、血飛沫から来栖の顔を守った。 「一」  探知機を確認しながら、南が告げる。  この縄張りには、突然変異体の屍が一体いるという話だった。  突然変異体は、銀に対して免疫があり、銃や槍がほとんど効かない。  簡単に殺す方法は、一つしかなかった。  南の背後で、唸り声が上がった。     
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加