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僕は、南を強すぎないよう押しのけ、居間から襲いかかってくる屍の姿を確認する。
足を踏ん張り、十字弓(クロスボウ)を構えた。
屍は、女性の顔をしていた。
美人であったのだろう、と思う。
躊躇うことなく引き金を引いた。
巨大な矢が放たれ、屍の胸に突き刺さると、見事に銛の役目を果たした。
矢の後方に接続された鋼のケーブルが、勢い良く矢に追いついて伸びていった。
「引っ張れ!」
来栖が無線で指示を出した。
その指示を受け、弛ませた状態で家の玄関から引いてきていたケーブルが、どんどん張っていくのが目に見えて分かった。僕らの後方へと、ケーブルが引っ張られていく。
巻き揚げ機(ウインチ)が動き始めたのだ。
ついにケーブルが限界まで張られ、矢を強く引いた。
矢の刺さった屍は、つんのめるようにして倒れ、引き摺られ始めた。
屍は、胸を貫かれながらも、暴れ狂いながら悲鳴を上げた。
近くにあったテーブルを一撃で粉砕し、飛散した木片が僕たちに当たる。
回収されていくケーブルは勢いを増し、屍を、強く引き摺っていく。
ケーブルと床の擦れ合う音が、屍の唸りと同調する。
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