1-1 血は紅く

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 最近、雇ったばかりのアルバイトで、入社したのは金銭的な理由ではなく、憧れによるものらしい。  眼鏡をかけた、感じの良い少年で、学年的には一つ下だったように思う。  小鳥遊と同じだ。 「今日も、吸血鬼の奴らに一泡吹かせてやりましたね」 「尾瀬君、吸血鬼じゃなくて、吸血症患者」  と南が口を挟む。 「それも末期症状のな」  と来栖も補足する。 「ああ、すみません……伝説の怪物とはまた違うんでしたね」 「そうだよ、尾瀬君。伝説とは、全然違ってるんだよ」  ここぞとばかりに小鳥遊が身を乗り出してくる。 「例えば、にんにくも十字架も、よく頼ろうとする人がいるけど、効果はないんだよ。吸血症患者は、招かれないと人の家には入れない、というのも迷信だし」 「正確には、十字架は多少、効果があるけどな。パターン認識の問題で、発症患者は、ああいった図形に心理的不快さを感じるらしい。けど、それだけの話ってことだ」 「隊長、そんなの分かってるよー。それでね、尾瀬君。吸血症患者は、確かに人の血を吸うけれど、別に呪われた怪物に変貌したわけではないんだよ。血液に問題があるんだよ」 「血液、ですか」 「そう。吸血症患者の血は、正常な人間の血に触れないと、活性を保てないんだよ」     
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