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1-1 血は紅く
背後からの光源――電気ランプが、闇の中から屍の顔を照らし出した。
青白く、凶暴に尖った歯を剥き出しにした顔が、僕たちを見つけて歪んだ。
「三川(みかわ)!」
命令する声に従い、元SAT隊員が散弾銃(ショットガン)を構えて、一歩、踏み出した。
鍛え上げられた肉体と、洗練された動作。
闇と光の境目で、轟音が炸裂する。
屍の身体がくるくると舞い、部屋の壁へと叩きつけられるのを見た。
通常の散弾を用いた散弾銃。
その役割は、敵との間合いを作り出すことだった。
屍は、壁に叩きつけられると同時に起き上がり、素早く壁を伝って逃げ出そうとした。
三川の隣で、背の低い、小柄な少女が歩み出た。
小鳥遊結衣(たかなし・ゆい)。
その手に握られた拳銃――オートマチックの拳銃――九ミリの銀の弾が込められた拳銃――それこそ、屍にとって、本当の脅威だった。
最初に、頭が射貫かれた。
続いて胸に二発。
それらが、一秒未満の間隔で、行われた。
素早く確実な動作。射撃の名手。
屍は苦悶の叫びを上げ、本物の死体と化して、床を滑った。
「二」
残りの屍の数を、別の少女が告げる。
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