ずっと言いたかったんだ

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~15年前~ 「可南子さん、可南子さん、もう起きないと間に合いませんよ」 シスター堀は可南子の部屋に入り、二段ベッドの下で眠る可南子に小さな声でそう伝えた。 中学一年生の可南子には、朝の仕事がたくさんあった。 寮生活の決まりで、一年生は上級生の朝食の準備をしなければならない。 しかし、今年の寮に入った一年生は可南子しかいなかった。 普段は、年に4、5人の寮生がいるのだが、今年に限っては可南子一人だった。 「おはようございます」 可南子はそう言うと、一人で黙々と仕事を始めた。 シスター堀は、中学生の寮担当の先生だった。 その中でも年が若いシスター堀は、一年生が一人しかいない可南子のサポートを主にしていた。 夏休み以降、可南子は元気がなかった。 シスター堀は、可南子の両親からは夏休みにショックな事があったとしか聞いていない。 シスター堀は毎日可南子の様子を見ながら、可南子の方から話をしてくれることをずっと待っていた。
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