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可南子が席を立とうとすると、想太に腕を掴まれた。
「ごめん」
想太は一言そう言うと「座って」と小さな声で囁いた。
「朝倉さんは、彼氏はいないの?」
またぶしつけな質問をしてくる想太を、呆れた顔で可南子は見た。
「答えたくありません。
それより部長は福岡の方だと聞きましたが、何歳までそこに居たんですか?」
可南子の方こそ、想太への疑問はたくさんあった。
「12歳…」
「その後は、どちらへ行かれたんですか?」
「東京…」
「どうして?」
可南子は、15年間ずっと知りたくてでも何も分からなかった想太の所在を、今聞けることで心臓がドキドキしていた。
「ばあちゃんが死んで、遠い親戚に引き取られたから」
「え…
東京にいたの?」
想太は、可南子の反応をずっと見ていた。
本当に驚いているのか驚いているふりをしているのか、想太には全く見当がつかなかった。
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