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「知らなかった?」
想太は、半信半疑で可南子に聞いてみた。
「知るわけないじゃない。
おばあちゃんが、亡くなったのは知ってたけど…
その後、想ちゃんがどこに行ったのか、友達みんなに聞いても誰も知らなかったもの」
可南子はあの日々を思い出し涙が出そうになったが、ぐっと堪えた。
すると、歓迎会もお開きの時間となり想太は前へ呼ばれたため、可南子も元の席に戻り、茫然と想太を見つめた。
こんなに近くにいたなんて…
福岡に帰省して想太が居なくなったと分かった時から、私は毎日泣き明かした。
手紙を書くにも住所が分からず、幼い私は想太からの手紙をいつも寮のポストの前で待っていた。
それなのに、東京にいた?
可南子は、冷静になると同時に怒りがこみ上げてきた。
東京にいたくせに、何で連絡をくれなかったの?
可南子は前で挨拶をしている想太を見ていると、悔しくて涙が止まらなかった。
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