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「それじゃ、僕はそろそろ失礼します」
可南子の家で軽く食事を済ませた想太は、そう言って立ち上がった。
可南子の両親は悪い人じゃない…
この一日の出来事で、想太の中の悲しい過去が一つ塗り替えられた。
可南子を愛するということは可南子の全てを愛するということで、何も難しい事じゃない。
「じゃ、私も、一緒に行く」
「いいよ。
可南子は家に泊まればいいんだから」
可南子は不満そうな顔をしている。
「分かった…
じゃ、そこまで送っていくね」
想太は丁寧に可南子の両親に挨拶をして、その場を後にする。
家の外に出ると磁石が惹きつけ合うように、二人は肩を寄せ合って歩いた。
「可南子、これって夢じゃないよな?」
「うん、夢じゃないよ…」
「やっぱり、お父さん達の気が変わらないうちに早く結婚しなきゃ」
「大丈夫だよ」
可南子はそう言って、笑った。
すると、可南子は急に立ち止まり、何かを思い出したような顔で想太を見る。
「想ちゃん、この場所、覚えてる?」
想太は、目を細めて頷いた。
「ちょうどこの上が可南子の部屋の窓で、俺がこの電信柱に隠れて可南子をいつも呼んだ場所…」
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