ひとつ、ひとつ…

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可南子は、タクシーを待っている想太に一つ提案をした。 「想ちゃん、この際だから、福岡でできることに一つ一つ向かい合ってみない? 明日は夕方まで時間はあるし、何かできると思うんだ」 「例えば?」 「例えば… 私もしたい事、想ちゃんにも大切な事」 「何だろう?」 可南子は言う事をためらってしまったが、でも、今だから言わなければならない。 「想ちゃんのおばあちゃんのお墓参り…」 「ああ、そっか…」 想太は空を見上げて考えている。 「ばあちゃん、怒ってるだろうな… 全く、顔を見せなかったからさ」 「だから、行くんだよ。 ちゃんと謝って、そして、私達の結婚を報告するの」 可南子は繋いでいる想太の手を、強く握りしめた。 「想ちゃん、一緒に行こう… 二人で行けば、おばあちゃんはきっと喜んでくれるよ」 想太は笑みを浮かべ、静かに頷いた。 可南子と一緒なら、ばあちゃんも俺の事を許してくれるかな…
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