ひとつ、ひとつ…

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この日は極上にいい天気だった。 想太は、博多駅の近くでレンタカーを借りた。 祖母が眠っているお墓がある霊園には、電車で行くには遠すぎる。 昔の記憶をたどると、祖母と半日ほどかけて墓参りに行っていた事を思い出した。 車で行けば近い距離を電車とバスを乗り継いで、想太の両親の墓参りに行ったものだ。 想太は、昨夜、ホテルのパソコンで場所と住所を確認した。 15年以上も前の事だ。 そこに、松井家の墓が存在するかも定かじゃない。 想太は、車で可南子を家の前で拾った。 「想ちゃんが運転するの初めて見る」 可南子はそう言って、思いがけない福岡でのドライブにウキウキしている。 「よし、そんなに時間もないから出発しよう」 可南子は後部座席にボストンバッグを載せた。 そして、近所の花屋でお供えする花束も買っていた。 それは、大切に自分の足元に置いた。 こんな青空の下、大好きだったおばあちゃんに会える… 可南子は、はやる気持ちを抑えきれないでいる。 「何時頃に着くの?」
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