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ひどい有様の中、僕の視界に映る一人の少女がほんの少し、ぴくりと動いた気がした。
僕は泥に足を取られながら駆け寄り、その小さく細い体を抱き起こす。
「大丈夫かい、待っていろ、水をあげよう」
携えていた水筒から水を飲ませる。
彼女が今、寒いのか、暑いのかさえ分からない。
小刻みに震えているせいで、薄く開いた小さな口に水はほとんど入っていかない。
少女はそれからひゅーひゅーと壊れた笛のような音を立てて息をするだけだ。
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