第八章

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「一度即位をしてしまえば、今までのように気軽には会えなくなるからな。どうすれば翠玲とずっと一緒にいられるのか……。すごく悩んだよ。俺も兄上も、翠玲がいない日々は考えられなかったから」 「まず考えたのは、堯晄に召し上げてもらうことだった。少なくとも皇弟の屋敷のほうが、官吏のそれよりも往来が容易である。翠玲がこれまでどおりの家に住み続けるよりも、頻繁に会えると考えた」  ??慧は片肘をついて半身を起こすと、そのまま身を乗り出して堯晄へと視線を遣る。 「ああ、確かにそれも考えたな。だが、それでは誰を太子に指名するかが解決しなかった。博?があのまま昭儀に張り付かれて育ったのでは……」  つられて堯晄も上体を起こす。続いて翠玲も起き上がろうとして、しかし途中で腰に鈍い痛みが走り、翠玲の上体は寝台へと逆戻りした。翠玲は結局??慧の支えを借りる形で起き上がり、最終的には三人とも上体を起こして座っていた。 「当然不可能だな。政敵にしかならぬだろう。継ぐ者がいない状態で、妃を迎えたくないなどという戯言は言えまい。やはり翠玲だけを愛するわけにはいかないのかと、私は再び悩んだ」 「まあ結局この後、俺たちが色々考えていたことを吹き飛ばすような大事件が起こったわけだが……」  それは?(えん)の都を揺るがした大事件で、無論翠玲も知っていることである。むしろそれが原因で翠玲は後宮に収まることとなった。しかしまさか彼らが事件以前から翠玲のことを考えていたとは、翠玲は露ほども知らなかったのである。初めて聞かされる内容に翠玲はただただ驚いていた。 「初めに着手したのは、宮中にのさばっている奸臣を一掃することだった。そのために私と堯晄は片方を死んだことにして入れ替わり、噂を流して回った」
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