第八章

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「まあ、奴らのことは翠玲とは関係なくとっ捕まえるつもりだったがな」 「そこで問題となったのは翠玲をどうするかだった。ああ、扱い兼ねたという意味ではない。だから翠玲が気に病む必要はない。翠玲が足りなかった我々は、現状を利用することを考え付いた。罪を身体で贖えと命じ、後宮に閉じ込める。何と素晴らしい考えだろう。我ながら拍手喝采だった。だが……」  そこで??慧はぴたりと口を噤んでしまう。続きは堯晄が受け継いだ。 「その代わりに、俺たちは翠玲に好きになってもらうことを諦めた」  ??慧はふうと息を吐いて苦笑する。 「おまけにこの容姿だろう? 二度と見たくないと言われても決して不思議ではない。そんな男が翠玲に触れるには、償いとして身体を差し出せと命令するしかなかった」  翠玲は静かに首を振った。 「私、二人には憎まれていると思っていました。でも、取り返しにつかないことをしてしまったから、それも当然だと思っていました……。それに、私に優しくするのは復讐の一環だと……!」 「何故だ?」 「優しくしておいて、最後に突き放すつもりなのかと。だから気を許さないようにと、ずっと自分を戒めておりました。……結局駄目でしたけど。??慧様に、堯晄様に。優しくされて、何も感じないでいられるはずがありません」  翠玲の口元に笑みが零れると、そこに??慧の唇が触れる。 「憎しみは、確かに我が心に存在した。これは、翠玲を完全に手中に収めるための天の采配。一時はそう考えようとした。そして、事実そうであった。以前の状況のままでは決して為し得なかったことだ。だが私の顔に消えぬ傷を付け、何より堯晄に堯晄としての生きる道を閉ざさせた……。だからやはり奴らのことは今でも許せない」
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