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「翠玲、どうした?」
双珠を弄びながら堯晄が尋ねる。
「……まだ中に二人が入っていて、拡がっている感じがします」
翠玲はうっすらと頬を染めながら答えた。
「このまま閉じなかったらどうしよう……」
「そのときは我々が責任を取る。安心するがいい」
今の??慧の言葉で翠玲は思い出したことがあった。
「あの! あの……」
確かめたいと思いつつ、しかしいざとなったら決心がつかない。翠玲はさんざ逡巡する。すると??慧は胸の尖りに爪を引っ掛けながら優しく声を掛けた。
「翠玲、落ち着いて言ってみるといい」
翠玲は迷いつつも、やがてはゆっくりと唇を開く。
「……私のこと、好きですか? さっきからずっと聞いていると、本当に好きみたいです。そうだったら嬉しい、けど……」
遂に口に出してしまった。思い違いだったら恥ずかしい。呆れられたらどうしよう。様々な思いが翠玲の脳内を駆け巡る。
しかし二人は少しも嘲笑うこともなく、ただ真摯にその思いを受け止めるだけだった。
「そんなの、初めから好きだった」
「本当に……?」
翠玲はにわかには信じられなくて、大きく目を見開く。しかし??慧にしても、堯晄にしても、不安そうな翠玲を前にしてただ頷くばかりだった。
「ああ。強く意識しはじめたのは、兄上の即位が現実味を帯びたときだったけどな」
??慧は何かを思い返すように静かに瞳を閉じた。
「……今となってはもう起こり得ないことだが、仮に私が皇帝として即位していたとしよう。無論その場合、堯晄と入れ替わるもなく……だ。そうなると私はいずれ数多の妃を迎えなければいけない立場となる。当然、男の翠玲を後宮に入れるわけにはいかない。そこで私は悩んだ」
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