1.視線

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「最近おかしいんだよ」 「おかしいって?」 「寝てるときにへんな音が聞こえたりして、気味悪くてさ」 「外の音でしょ?」 「家の中で鳴ってるんだよ・・・それでほら、ななっちはオバケとか信じない派だろ?そういうやつに来てもらったら安心できるかと思ってさ」 「大学の友達に頼みなさいよ」 「みんなに断られたし男ばっか泊まってたらむさいし・・・」 「後半本音でしょ」 「あ、そうだ!」 相変わらず仲が良い二人の会話を笑いながら聞いていると、ぐるん、と椅子ごとこちらにむいた啓くんに思わず笑みが引きつった。こういうタイミングでこちらを向くということは私にとって良い言葉は出てこないだろう。 「雨音も一緒ならどう?!」 「ちょ、ちょっと!」 「それなら良いわよ」 「良くない!なんで私まで!」 「良いじゃん、どうせこっちでまだ友達少なくて暇してるだろ!」 「啓ってほんと一言多い・・・」 やはり巻き込まれるようだ。そして啓の言葉がぐっさりと刺さった。 私は高校を卒業してすぐに親元も地元も離れてこの街へきてこの店で働かせてもらっているから学生の頃とは違って歳の近い子たちと出会う機会も遊ぶ機会も少ないのでなかなか友達ができない。 私が春に入ってから三ヶ月後、学生達の夏休みに啓と七海の二人が来てくれたおかげでやっと友達ができたくらいだ。そんな彼からの頼みを断れない、ということもわかっていてさらに私が居れば七海がついてくるのも確実。 「なあ~頼むよあまね~!」 「・・・うーんんん」 「もしかして怖いのダメ?」 「そんなに怖いの好きな人いないと思うけど」 「おばけなんているわけないじゃない。アタシもいるし平気だって。折角三人とも休みの日に暇してるんだし、行こうよ」 「うーん、まあ。そうだよね、幽霊なんているわけないよね」 怖いのが好きだなんて物好きな人間はそう居ないだろう。 七海の言うとおり、普段の休みはあまり予定も会わないのだし少しくらい気乗りしなくても行ってみれば楽しいものだ。 「オムライスできたよ」 少し浮かない顔をしていた私の前にオムライスがやってきた。三人揃って食べ初めて、食べ終わった頃には先ほどの沈んでいた気分もすっかり戻っている。
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