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カランカラン、と来客を知らせる音に顔を上げるとそこには腰に浮き輪、ご機嫌なアロハシャツを着て飛び込んできたお客。確か彼はこの店の従業員だったはずだ。
「啓、なにやってんの」
私も思っていたことを呆れ顔の七海が言った。店長は「今日も元気だねぇ、啓くんは」と笑っているけれど私と七海は笑えない。
「海行こうぜ!!」
「いや、仕事だし」
「そうだよ、啓くんは休みかもしれないけど」
「何言ってんだよ、明日から連休だろ」
「はあ?」
「だって、明日から店長と奥さん結婚35周年記念に店閉めて旅行行くじゃん」
「「あ、そうだった」」
今度はなに言ってんだお前ら、と啓があきれた顔をする番だ。彼の言うとおり明日はマスターと奥さんは結婚記念日でそれも35周年だからお祝いに何日か旅行に行くのだと奥さんが嬉しそうに話してくれたのを思い出す。私が一人でお店を開けることもできたけど、特製オムライスは出せないしたまには連休をゆっくり過ごすと良いといわれておことばに甘えることにしたのだった。
「だから、明日から、海!行こうぜっ!!」
「嫌よ、暑苦しい」
「ええ~この前お前が良いかもつってた先輩呼ぶしさあ」
「・・・・」
「お、もう一押し?!なあ、雨音も行こうぜ!どうせ友達と海とか行ったことないだろ!」
「ちょっと!私にだって海に行く友達くらいいたよ!」
「それも学生のときだろ!雨音だって俺らと同い年なんだしたまにははしゃごうぜ!な!」
お願い!行こう!お願い!と何度も何度も押されてしまってついに断ることができなかった私と「気になる先輩」がいるということで行く気になったらしい七海は明日早朝から海へ行くこととなった。水着なんて持っていない、と言い訳していたら昼休みに買って来い!と言われたし行く気になっている七海に「水着選びに行こうよ」なんて言われればもう行くしかない。
水着なんて肌の出るものあまり着たくないけどせっかく行くなら海に入りたいし、私と七海はお昼休みに二人して水着を選びに行った。
「あ、この水着かわいい」
「へえ、似合うんじゃない」
二人してあーでもないこーでもないと意見を出し合いながら結局色違いの水着を購入して店に戻ると急いでお昼ご飯を食べてから仕事を再開。明日のこともあるからといつもより早くお店が閉まったので私達も慌てて帰宅する。
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