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早朝、いつもより2時間も早く起きた私はバタバタと忙しなく出かける準備をする。その間に突然着信があったから慌てて電話を取ると啓からだ。
「もしもし?」
『あ、もしもし雨音?』
「どうしたの?」
『ちゃんと起きたかと思って!』
「起きてるよ。啓ってばこんなときは寝坊しないんだね」
『わはは』
「褒めてないからね?もうじき家出るけど集合場所レンタカーのお店で良いのよね?」
『おう!』
「はいはい、それじゃあまた後でね」
普段は寝坊ばかりするくせに遊びに行くときばっかりは早起きできるなんてまるで小学生じゃない、と思わず笑った。
それから10分ほどですっかり準備を整えて家を出発、啓が指定したレンタカーのお店に向かう。家からは少し遠いけど満遍なく全員の家から中間地点にあるそのお店に到着するとすでに啓と数人の友達がいてなにやら悩んでいる様子だ。そしてその中に一人めんどくさそうに欠伸をしている人物がいる。
「おはよう。啓、どうしたの?」
「あ!雨音!それが、運転する予定の奴が一人ドタキャンでさ・・・いやまあ夏風邪だしあんな鼻水ずるずるで来てもかわいそうだから仕方ないけど」
「あらら。でも他にも何人か来るなら免許持ってる子もいるよきっと」
「何、出発前に微妙な顔してるのよ啓」
「七海~!お前免許は?!」
「ない」
「ですよね!」
「そっちの女の子達は?」
「私達も持ってないのー」
夏風邪で直前にダウンしてしまった可哀想な男の子はどうやら運転手の一人だったらしく、運転手は三人で車三台にわけて行く予定で、一台はあの先輩の車、もう一台は啓の同級生、そしてレンタカーで一台借りて行く筈だったのだがどうしたものか。二台では全員乗り切れないし、とみんなが暗い顔になりかけたので私は渋々手をあげた。
「私、免許持ってる」
「え?!うっそ!!マジで!」
「まじで。車はマスターの車たまに借りて出かけるし」
「神かよ!!」
「大げさな・・・じゃあ私手続きしてくるから待ってて」
運転は苦手でもないし買い物に行くときはよくマスターの車を借りるので大丈夫だろう。指定された車種をレンタルして戻るとどの車に乗るかを決めるくじ引きをしようという話になっていて、適当に乗れば良いのにと思っていると助手席側のドアが開いた。
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