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ドアを開いたのは先ほど焦っているみんなの中で一人だけ欠伸をしていた人物だ。
「あ、清明くん」
「暑い。なんでもいいからアイツらさっさと乗れば良いのに」
「あー!!!晴太!!お前なに先に乗ってんだよ!!しかも助手席!!」
「車酔いすっから前が良いんだよ。後ろ揺れるだろ」
「え、お、おう・・・もう、みんな適当に乗ろうぜ。あ、七海、こっちは定員オーバーだからあっちな!」
「はあ?!なんで、私も雨音の車、ちょっと!」
せっせと友人数名を車に押し込んで乗り込んできた啓は先手を打ったとばかりに良い笑顔で七海を先輩の車に送り出すとドアを締めた。余計なお世話、といえるだろうけど七海にはあれくらいしないと素直にならないだろう。
「車出すよ」
先頭に七海の乗る車、私は三番目に続いて出発する。運転中は賑やかな声をバックにときどき会話に混ざり、それなりに楽しく過ごしている。
高速に入って県を越えて運転すること4時間、漸く海が見えてきた。都会から離れたその場所からさらに奥に入るというものだから何事かと思ったがどうやら穴場があるらしい。
「あのトンネル抜けてしばらく走ったら良い穴場につくんだよ!去年も行ったけど最高だった!」
「そこって入って大丈夫な場所なんでしょうね・・・」
いくら啓がバカといっても危ないことはしないだろう。単純に此処より手前に海の入り口があるからわざわざ人が行かないというだけの話しで、少ないながらに人はいるようだ。トンネルに入ると古い場所だからか少し明かりが暗い。さほど長くは無いので今の時間帯ならそれほど問題ないだろうし、前方に二台走っているからまず大丈夫だ。
雨の日のことを思い出すと少し怖くなるけれど、今はこの人数だし晴太くんも何も言っていないからたぶん大丈夫だろう。
「あ、ほんとだ。人いるけど少ない」
「穴場で良いけど難点はコンビニと売店がちょっと遠いトコだな!まあいろいろ買ってきてるし平気だろうけどさ」
車を三台並べて駐車して、まずは女子が先に更衣室に行くこととなった。女子が着替えている間に男子がテントやシート、バーベキューのセッティングをするらしい。
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