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七海はそういう非科学的なことが嫌いなのも信じていないのも知っているけれど、だからといって全てを否定していいわけではない。それでもそう強く言い返せないのはやっぱり一般的に考えればおかしいことだとわかるからだ。人は多くの意見が賛同するものに意識がいくものだし、自分の目で見なければ信じられないはずだ。偏った考えも、仕方が無い。
私だってあんな体験が無ければ信じることなんてなかっただろうから。
「まあ、いろんな人がいるもんね!私着替え終わったし先に行くよ。みんなは気合いれておめかししてきてね!」
「あ、雨音!」
苦笑いを浮かべて否定も肯定もせずに私はその場を逃げ出した。彼女達の目に私がどう映ったのかはわからないけど別に多くに認められなくても一人の理解者が居ればそれで良い、私も誰かのそういう存在でありたいから一度決めたことは曲げたくない。
ほんの少し胸が苦しかったけど、前を向いて走ると男子達がテントを組み終わったところに到着っした。
「何か手伝うよ」
「あ、えーっと」
「守澄です」
「じゃあ守澄さん、火おこせる?」
「やったことないけど・・・やってみます!」
バーベキューのセットもしっかり準備してあって墨が中に入っている。みんな荷物の運び出しやテントなどの準備で手が回らなかったらしい。
軍手をはめて片手にはバーベキュー用のトングを持ってせっせと炭に火を起こしていく。これがなかなか難しくて上手く火がうつってくれない上に暑くてたまらない、漸く火が良い感じになったころには汗だくで、ボタボタと落ちるのを羽織っていたパーカーの袖でぬぐっていると頭にごすん、と鈍い衝撃。
「あいた」
「飲めよ」
「あ、ありがとう」
「なんでアンタがやってんの」
「手が回らなかったみたい。誰かサボってたんじゃないかなあ」
「・・・」
「サボってたのね・・・」
「あんだけ男手ありゃ足りるだろ」
「そういえば、セイメイくんて呼ばれてるんだってね?」
「あー、あいつらか」
「あんまり似合わないよね」
「似合うもなにもあるかよ」
「でも清明くんって言いにくいから呼びやすいかも」
「そんなわけわかんねー名前で呼ぶくらいなら晴太って呼べ」
「君がきちんと私の名前覚えたらね、セイメイくん?」
私がいたずらに成功した子どものように笑っていると彼はすこしむーっとしていた。
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