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女子達で準備をすっかり終えた頃にみんな戻ってきたのでいよいよ海で遊ぶ。海なんて最後に行ったのがいつだったかも覚えていないから少しドキドキする。
「行かないのか」
「行くよ。晴太くんは?」
「入らない」
「何しにきたの?」
「水場って霊が溜まりやすいんだよな」
「なんでそんなこと言うの?!」
「ははっ」
「笑い事じゃないよ!もう!」
「早く行けよ」
人を怖がらせて笑うところは相変わらずで晴太くんの肩をばしんと叩いたあと私も皆に続くように海へ走った。都会から離れているこの場所は綺麗な水をしていて、想像していたよりずっと冷たい。
「あーまーね!!!」
「あきら・・・うわっ!」
水の温度に慣れようとしているときに後ろから声をかけられて振り返ると思い切り水をかけられた。
「雨音ってさあ、意外とかわいい声ださないよな。女子ならきゃーっとか言うもんだろ?ほら、あいつらみたいに」
私を残念そうに見る啓の顔に水をかけ返すと終わりの無い戦いが始まってしまい、10分くらい水の掛け合いをしたけど私がギブアップして泳いで逃げる。そこに「なにやってるの啓ー!女の子いじめちゃダメでしょ!」と先ほどの女の子がやってきた。彼女を振り返って応援のガッツポーズをすると彼女は見えないところで親指をグッと立てている。
そんな二人から離れると今度は男子達が投げあいをしていたのでそこから更に逃げて結局浅いところに来てしまった。
他の女の子たちがいたので少しの間そこに混ざって遊んだあと、一度浜辺から伸びている階段の上にある水道で体を流してからテントに戻る。
「もう泳がないのか」
「バーベキューの準備でもしとこうかなって。あの調子じゃ忘れてそうだしお腹減るでしょ」
「ふうん」
「雨音ー!」
「七海」
「バーベキューの準備しようって花波くんが」
「あ・・・守澄です」
「よろしく、守澄さん」
どうやら一緒に歩いてきたのは七海の言っていた先輩だったようだ。花波葵(はなみ あおい)という綺麗な名前の彼はとても穏やかに笑う人だ。他にも先輩は何人かいるようだけどその中でも一番落ち着いた印象を受けた。
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