5人が本棚に入れています
本棚に追加
私と七海と花波さんの3人でバーベキューの準備をしている間、さっきまで喋っていた晴太くんはテントに引っ込んでしまったけど花波さんはそれを見逃さなかった。
「晴名くん」
「なんスか」
「このコップにみんなの名前書いてくれるかな」
「アイツらの名前なんか知らねーッス」
「嘘、君記憶力良いの知ってるよ。ほら、寝てないで」
先輩相手だからかため息をつくことも出来ず渋々とペンを受け取って透明の使い捨てのコップに名前を書いている。
「ほんとに覚えてるんだね、意外」
「サボってないで手伝ってこいよ」
「だって今2人良い雰囲気なんだもん、邪魔しちゃ悪いよ」
ちら、と視線を向けた先ではすこしぎこちなく笑いながら話している七海とニコニコと笑っている花波さん。微笑ましくてこっちまでにやけてしまいそうになるのを堪えつつ、晴太くんが名前を書いているのを見るとまた意外な発見。
めんどくさがりの性格の割に字がとても綺麗だ。私の字はなんだか走っているみたいと言われるくらいなのであんまり綺麗とは言えないし女の子らしい字でもなかったりする。
「字、綺麗だね。お箸の持ち方もだけどペンの持ち方も綺麗だし昔はお行儀の良い子だったの?」
「別に」
相変わらず気の載っていない時の返事は短くて会話が続かないけど気にならないので「ふーん」と私も適当な返事をしておく。
話している間に準備も整ったのか、海で遊んでいるみんなを呼び戻す花波さんの声が聞こえてきた。
「うおー!バーベキュー!うまそー!」
「食おうぜー!」
賑やかな男子たちが早速肉に食いついている。女子達は他にもお弁当のおかずを作って来た子達もいるようでみんなに配っている。
「肉取って」
「自分で取りなよ…」
取るのがめんどくさい、立つのもめんどくさいというのが顔にとても良く出ている晴太くんの紙皿を受け取ってお肉の他にも野菜を入れておく。文句を言うかと思ったけど彼は好き嫌いがあまり無いのか黙ってそれを食べている。今日は意外なところが良く見える日だ。
最初のコメントを投稿しよう!