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もしかしたら冷たさにびっくりして足が動かなくなっただけかもしれない。もし違ったとしても今パニックになんてなったら溺れてしまうから決して下を見ないようにして腕だけで水面まで這い上がった。
「雨音!上がってくるのおせーから溺れたかと思ったぞ!」
「ご、ごめん!私ちょっとトイレ行ってくる!水が冷たくて冷えちゃった!」
足の違和感はまだ取れていないし、動かないけど何とか両腕と片足で泳いで浅瀬に行くと途端に足が震えだした。
自ら上がっても足を見ることが出来なくてヨタヨタと頼りなく歩いているとぐっと腕を引かれた。
「晴太く…ヴっ」
腕を掴んだと思ったら支えるでもなく、バンバンと私の背中を叩いた晴太くん。それを見た七海が慌てて走ってくるのが見える。
「ちょっと、何してんの!」
「わたしが、みず飲んじゃって気分悪くて…」
「そうなの?まぁ、投げられてたし…それにしたって強すぎじゃないの?」
「お前には関係ないだろ」
「はぁ?」
「喧嘩しないの!平気だから、少しテントで休めば大丈夫だし!七海ほら、花波さん呼んでる!」
「何かあったら呼びなさいよ!雨音!」
また言い合いになりそうになる二人を宥めてからテントに入ると10分ほどしてから晴太くんが歩いてきた。手に持っているペットボトルを上下に振りながら歩いてくるものだから何をやっているのかと見ているとそれを差し出される。
「え、なにこれ」
「飲め」
「?」
熱中症にならないように飲め、ということだろうか。確かに喉もかわいていたので蓋を開けて一気に飲む。
「あ"っ、なに、これ"…」
まるで唐辛子でも漬けていた水みたいにカッと喉が熱くなって、飲み込みきれなかった水が口からこぼれた。
「ヴっ、ぅ」
「アンタほんとに見えてないのがおかしいくらい気づくよな。ほら、ちゃんと息しろ」
「げほっ、なに、飲ませたの?!」
「塩水」
「塩水があんなに喉にくるってどんだけ塩いれたの」
「そんなに入れてねぇよ。悪い気が体に溜まってっからそう感じただけだ、持っかい飲んでみろよ」
「そんなの飲めない!」
「いーから、飲め」
いつかのように顔を掴まれて口に水が入ってくるけれど、あの時のような気持ち悪さも先ほどのような喉に来る熱さもない。
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