告白

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 彼のお目汚しをしてはいけないと、私はそそくさとその場をあとにしようとした。先ほどの私を呼ぶ声は、きっと幻聴に違いない。  近頃は前にも増して、誰かと会話をするということがなくなった。  高校二年生ともなれば、すっかり仲良しグループはできあがっていて、そのどの輪にも入ることのできなかった者は、孤独を享受するしかない。  知らず抱えた寂しさが、私にあのような幻聴を聞かせたのだ。いけない。早く家へ帰って、コウくんにまた人と話す練習に付き合ってもらわなくては。  ちなみにコウくんというのは、我が家で飼っている五歳のゴールデンレトリバーのことである。  背中を向け、数歩歩き出したときだった。教室の扉に手をかける前に、誰かの手が私の肩に置かれた。  ああ、とうとう私は幻聴だけでなく幻の触感まで感じるようになってしまったのか。  弱っている人間は自分の状態に気づくことができないと言うが、私もいつのまにかそこまで追いつめられてしまっていたのか。 「なんで無視すんの」
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