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柳慎吾は病院の廊下を歩いていた
『何で僕が助かっちゃったんですかね…』
千葉の言葉がリピートされて思わず舌打ちをする
何でって…心臓が動いてんだ。仕方ねえだろうが…
それを何嘆いてんだよ…
そういうのは、嘆いていいもんじゃねえんだよ
イラつかせんなよ
気持ちと一緒に歩く速さも増していく
「きゃっ!」
柳の足に真正面からぶつかり、小さい女の子がポテッと倒れた
「うわっ!ご、ごめん」
慌てて女の子を助け起こしたが
「お兄ちゃんダメでしょ!ちゃんとごめんなさいしなきゃ!!」
怒られた
「え、あ、ご、ごめんなさい?」
「違うっ!」
え、今怒られてるよね?謝ったよね?
小さい女の子はプウッと頬を膨らませる
「お兄ちゃんもママに言われたでしょ!心を込めて言うのっ!」
あーごめん言われてないわ
あ、でも…言われたな。春宮さんに…
『あーダメダメっ!心ないよ!!空っぽ!空っぽの酒の空き瓶貰っても嬉しい!?心を込めてもう一回、さんはいっ!!』
春宮さん…俺、あんたのお陰で根暗ニートから感情だせるまでになったんだよな
「…いちゃん、お兄ちゃん!ちゃんと聞いてるのっ!?」
「ごめんね。もうしないね?」
「うん!いいよ!!バイバイお兄ちゃん!」
そう言って看護婦のいる方に歩いていった
ああ、あの子、入院してるんだ…
そう思いながらまた歩こうとすると、蕾ちゃんが駆けてきた
「走んなよぉ~!小さい女の子に怒られちゃうよぉ~俺みたいに」
「そんな間抜けな声出してる暇ありませんっ!!」
すごい形相だ
せっかくの可愛い顔が崩壊しちゃうぞ
「な、なにぃ~どうしたんだよぉ~」
そう苦笑いした
「千葉先輩が…病室から消えました…」
電撃が走り、コンビニの袋がガサッと落ちた
「そりゃぁ…ダッシュで探すしかないっしょ…」
そう言って女の子に怒られたことも忘れ、看護婦が注意するのも馬耳東風で廊下を走った
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