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死へと急いでいた足がフラフラとカーテンを開け、春宮先輩が横たわるベッドに向かう
春宮先輩はまだ生きていた
一呼吸一呼吸生きている証に呼吸器が白く曇り、曇りが引く、それが繰り返されている
繰り返される仕事は嫌いだ
それをこんなにも嬉しく思う事は無かった
僕は母を肺ガンで亡くした
母の呼吸器を付けた顔はは苦しそうに歪み続け、最後は微笑して死んだ
春宮先輩の顔も苦しみに歪んでいると思っていた
不思議だ
同じ生と死の狭間に立っているのに春宮先輩は安らかに眠ったような顔をしている
もしかしたら植物人間とかいう脳死状態になってしまったのか?
植物人間になれば死ぬまで眠り続け、目が覚めることはない
人をいじる無邪気な子供のような笑顔も、時折見せる冷たい教育者の顔も、目を見張る推理、猫を被った美しい微笑、自由奔放な振る舞い…
全ての春宮先輩を作る要素が消えて無くなるんだ
2度と見ることはできないんだ
目から涙が零れそうになったその時、カーテンがシャッと音を立てて勢いよく開かれた
「あ、こんにちは。親戚の方ですか?私は守さんの手術をした主治医の田口です」
主治医の田口とかいう若い短髪の男は「どうぞお見知りおきを」とにっこり笑った
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